TIG溶接が他の溶接より難しい理由と上手なやり方
TIG溶接は、細かい溶接と美しい仕上がりが特徴。ただし、習得に難易度が高いのも事実です。
本記事では、TIG溶接が難しい理由と、初心者でも美しいビードを実現するためのポイントを、3つのステップに分けて解説します。これからTIG溶接を始める方は、参考にしてみてください。
目次[非表示]
- 1.1. TIG溶接が難しい理由
- 1.1.集中力と繊細な操作が必要
- 1.2.各設定の微調整
- 1.3.溶接部をはっきりと見ることができない
- 1.4.高度な技術の必要性
- 2.2. それでもTIG溶接が好まれるメリットとは?
- 3. 3.上手なTIG溶接のコツ
- 4.4.ステンレスにTIG溶接するコツ
- 4.1.隙間を無くして溶接する
- 4.2.電極と母材の距離を近づける
- 4.3.パルス制御で対応する
- 5.5. 上達を目指すには?
- 6.まとめ
1. TIG溶接が難しい理由
TIG(タングステン・イナートガス)溶接は、他の溶接方法と比べて難易度が高く、習得には時間がかかると言われています。その理由は、以下の点にあります。
集中力と繊細な操作が必要
TIG溶接は、片手にトーチ、もう片手に溶接棒を持ち、両手を駆使してアークと金属を精密に制御する必要があります。高い集中力と細かい操作が求められる作業です。アークの長さや角度、溶接棒の送り速度を微妙に調整しなければなりません。例えば、アークの長さが長すぎると安定したアークが得られず、逆に短すぎると母材にダメージを与えることがあります。また、溶接棒の送り速度が一定でないと、ビードが均一に形成されず、強度に問題が生じる可能性があります。これらの調整を同時に行うことは、熟練の技術を必要とします。
各設定の微調整
TIG溶接を上手にするには、母材の種類、厚さ、形状に応じて最適な溶接電流やガス流量、トーチの角度などを設定する必要があります。例えば、アルミニウムのような高熱伝導率の材料には、高い電流設定が必要であり、ステンレス鋼の場合は低い電流で細心の注意を払って作業しなければなりません。さらに、溶接前には母材の洗浄、脱脂、研磨などを行い、表面の不純物を除去することが重要です。これらの準備を怠ると、溶接不良や欠陥の原因となります。例えば、母材に油分や汚れが残っていると、溶接中にガスが発生し、ビードに気泡が入り込むことがあります。
溶接部をはっきりと見ることができない
TIG溶接では、アーク光が非常に強く、溶接部を直接見ることができません。溶接部を正確に確認するためには、特殊な溶接ヘルメットやフィルターが必要ですが、これでも完全に視認できるわけではありません。そのため、作業者は音や手先の感覚を頼りにビードの状態を判断しなければなりません。例えば、アークの音が変わることで、アークの長さが適切であるか、溶接棒の送り速度が適切であるかを判断することができます。また、手先の感覚を研ぎ澄まし、溶接中のトーチや溶接棒の微細な動きを感じ取ることで、より細かい操作が可能となります。
高度な技術の必要性
これらの理由から、TIG溶接は他の溶接方法と比べて習得が難しく、精密な操作や適切な設定・準備、そして高度な技術が要求されます。そのため、溶接工には高い技能と豊富な経験が求められます。これらを身につけるには、日々の訓練と実践を積み重ねることが不可欠です。
2. それでもTIG溶接が好まれるメリットとは?
TIG溶接のメリットは多岐にわたり、特に高品質で精密な溶接が求められる場合に有効です。以下にTIG溶接の主なメリットをまとめます。
まず、TIG溶接は非常に高品質な溶接です。アークの安定性が高く、溶接ビードの見た目が美しいため、外観が重要な製品や装飾品に適しています。精密で細かい作業が可能であるため、薄い金属や小さな部品の溶接にも最適です。また、TIG溶接は多様な金属に対応可能。ステンレス鋼、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル合金など、幅広い素材を高い品質で溶接できます。特に、アルミニウムやチタンのように他の溶接方法では難しい金属に対しても使えるのがメリットです。このほかにも、溶接品質の均一性や酸化や汚染の少なさなどもポイントとなっています。
3.上手なTIG溶接のコツ
こうした難点を克服するために、以下のポイントを意識して練習してみましょう。
基本姿勢と手の動き
安定した姿勢で作業を行い、トーチと溶接棒をスムーズに動かすための基本姿勢と手の動きを習得しましょう。具体的には、以下の点に注意してください。
足を肩幅程度に開き、背筋を伸ばしてまっすぐに立つ
トーチを持つ手は肘を軽く曲げ、リラックスした状態にする
溶接棒を持つ手は、トーチを持つ手と反対側 に置き、親指と人差し指でしっかり握る
トーチと溶接棒を直角に保ち、ワークに対して垂直に動かす
アークの長さの制御
アークの長さは、ビードの幅や浸透深に影響を与えます。アークが短すぎるとビードが細くなり、長すぎると溶接不良の原因となります。適切なアーク長は、母材の種類や厚さによって異なります。
練習と経験
TIG溶接には、正しい知識と技術に加え、練習と経験が必要です。最初は簡単なものから始めて、徐々に難易度を上げていきましょう。
練習方法は、以下の通りです。
廃材を使った練習
薄板を使った練習
パイプを使った練習
練習を重ねることで、アークの制御、溶接棒の使い方、姿勢や手の動きなど、TIG溶接に必要な技術を身につけることができます。
4.ステンレスにTIG溶接するコツ
ステンレスのTIG溶接は、以下のポイントに注目して実践することで、効果的な溶接が可能となります。
隙間を無くして溶接する
薄板の溶接では、溶接前の面合わせが重要です。溶接箇所が完全に接触し、隙間やズレがない状態にすると、その後の溶接が容易になります。隙間やズレがあると、穴が開きやすくなり、補修が必要になり、仕上がりも悪くなります。
電極と母材の距離を近づける
薄板溶接では、タングステン電極と母材の距離を極力近づけることが重要です。距離が近いほどアークが安定しやすくなります。母材に電極が触れてしまうこともありますが、その際は電極の先端をグラインダーで研磨して整えます。
パルス制御で対応する
薄板は溶けやすいため、入熱量を抑えるのがコツ。パルス制御を利用することで、高い電流と低い電流を交互に設定し、溶接時に高い電流で溶かし、低い電流で冷やす操作を繰り返します。これにより、一定の電流で溶接するよりも入熱量が抑えられます。また、熱伝導率の高い銅板を母材の裏に当てると効果的です。
5. 上達を目指すには?
独学でTIG溶接を習得するのは難しいと感じたら、専門の TIG溶接教室に通うのも有効です。教室では、経験豊富なインストラクターから直接指導を受けることができ、効率的に上達することができます。
また、インターネット上には、動画や記事など、多くの勉強材料が公開されています。動画で実際の溶接の様子を見たり、記事で基本的な知識を学んだりするのもいいでしょう。
まとめ
TIG溶接は、ステンレス、アルミの溶接に使われ、精度高い判明難易度が高いことがわかっていただけたのではないでしょうか?トーチを動かす速度や角度など、細かな部分にまで気を使うことで、やっと一人前になれます。